6.判例
5.人事制度
医療法人財団東京厚生会事件 東京地判平9.11.18
1.事案の概要
本件は、婦長としての雇用契約を締結し、使用者の経営する病院に勤務する看護婦であった労働者が、婦長から平看護婦に2段階降格した使用者の措置を違法・無効として退職後に、使用者に対して、債務不履行ないし不法行為を理由として、同退職時から定年退職時までの賃金相当額の逸失利益の賠償を求めたものである。
これに対し、使用者は、労働者の管理職としての不適格を理由とする降格で、正当な人事権の行使と主張した。
2.判決の要旨(主文)
労働者側一部勝訴
3.判決の要旨(理由)
一般論として、人事権の行使は、基本的に使用者の経営上の裁量判断に属し、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると認められない限り違法とは言えないが、使用者側における業務上の必要性の有無及びその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度、労働者の受ける不利益の性質及びその程度、当該企業における昇進・降格の運用状況等の事情を総合考慮して、その裁量判断が逸脱しているか否かを判断すると、本件の婦長から平看護婦への2段階の降格は、業務上の必要性があるとは言えず、その裁量の範囲を逸脱した違法・無効なものとした。しかし、賠償額については、使用者が違法な降格をしたことによって労務の受領を拒絶した場合でも、労働者は少なくとも労務の提供の準備をすることを要するなどの理由を挙げ、33万円と遅延損害金を認めるに留まった。
4.解説
降格については、職位を引き下げるもの(昇進の反対措置)と、資格を低下させるもの(昇格の反対措置)とがある。また、降格には、懲戒処分としてなされるもの(降格、降職等と呼称される)と、人事異動(配転)としてなされる場合がある。裁判例は、降格につき、一般的には権限や賃金の低下等の労働条件の改悪となることが多いことから、慎重な判断を示している。
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