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6.判例

1.採用

三菱樹脂事件 最大判昭48.12.12

1.事案の概要

労働者が採用に際し、身上書、面接試験において、以下のような秘匿ないし虚偽の申告をしたとして、試用期間満了後に本採用を拒否された。

(1) 大学在学中、学生運動に従事した事実を記載せず、面接試験の質問に対しても、学生運動をしたことも、興味もなかった旨、虚偽の回答をした。

(2) 大学生活部員として同部から手当を受けていた事実がないのに、手当を受けた旨虚偽の記載をし、生活協同組合において理事・組織部長の要職にあったにもかかわらず、これを記載しなかった。

そこで、労働者は、労働契約に基づく権利の確認と賃金の支払いを求めた。

2.判決の要旨(主文)

労働者側敗訴。労働者の雇用契約上の権利を認めるとともに賃金の支払いを命じた原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。

3.判決の要旨(理由)

憲法は、思想・信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方で、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業は、自己の営業のためにどのような者をどのような条件で雇うかについて、原則として自由に行うことができる。企業が特定の思想、信条を有する者をそのことを理由に雇入れを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。また、労基法3条は労働者の信条による労働条件の差別を禁止しているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制約する規定ではない。
企業が労働者の性向、思想等の調査を行うことは、企業活動のとしての合理性を欠くものということはできなし、本件において問題とされている使用者の調査が、直接には、労働者の過去の行動についてされたものであり、ただその行動が労働者の思想、信条と関連していただけであることを考慮すれば、そのような調査を違法とすることはできない。

4.解説

企業が企業存立の目的である利潤追求のための労働力確保のため、いかなる者を雇い入れるかは企業の自由であり、採用を強制されることはない。上記の裁判例では、労働者が有する思想・信条の自由および法の下の平等と企業の契約締結の自由との関係において、企業の契約締結の自由を強調した結論を導き、採用過程における使用者による応募者に関する広範な情報収集を事実上承認したものである。
ただし、最近、使用者の採用の自由が、雇用における差別を禁止する観点や個人情報の保護の観点等から、徐々に規制される傾向が見受けられる。また、厚生労働省は、人種、民族、社会的身分、門地、本籍、思想及び信条、労働組合への加入状況等に関する情報を収集しないよう指導を行っている。
このように、上記裁判例は、先例としての価値を有するが、実際にはこの判決が認めた企業の広範な情報収集活動の自由は制約される方向にある。
なお、本事件は、昭和51年3月11日差戻審で和解が成立し労働者は原職復帰している。


 

 

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